「カッコウはコンピュータに卵を産む」クリフォード・ストール

カッコウはコンピュータに卵を産む〈上〉
カッコウはコンピュータに卵を産む〈下〉
を読み終えた。20年ちょっと前のネットワーク侵入者を追い詰めていくお話で、とても地味でありながら臨場感あふれ、驚きのある本でした。

著者のクリフォード・ストールはローレンス・バークレー研究所のケック天文台から同研究所コンピューターセンターへ移動となった。彼はUNIXの課金システムが本来の請求額から75セント足りないという問題に、新入りの小手調べとして取り組むこととなった。調べるうちに何ものかがシステムに侵入していることが分かり、そいつの追跡がはじまった。

文中でもハッカーではあるが伝統的な意味でのハッカーではなく、害をなす方のハッカーであると書かれてあり、最近の言葉で言うならクラッカーと称したほうがよさそうだ。
FBIに対してあまりいい印象を抱いてないところから研究所と諜報機関の仲が悪いのは日本と一緒かと思っていたのだが、そうではなく、野外コンサートの為にハッカーの追跡に興味をなくしたり、FBIに限らず三文字(FBI,CIA,NSA,OSI)の諜報安全機関に対し根本的な不信感をもっていたり、侵入者の追跡は犯罪者をとっちめるというよりも研究に近いととらえていたりと属する思考(文化)が、むしろハッカーと近い風に感じられ、面白く読んでいた。
さらにFBIやCIAと協力してるとかあの人に言えないとか、また著者の周辺人物からなぜCIAに協力するんだハッカーは俺たちの仲間じゅあないかなどと諭されたりなど、このあたり西海岸のプログラミング文化がまだまだ色濃かった時代なんだと感じた。

犯人探しもプリントアウトで行うとか、牧歌的なところはあるが、セキュリティってどういうのと言う問題を把握するにはもってこいの本だった。また、それ以上に三文字機関により停滞させられる調査とか、小説ではありえないノンフィクションの面白さが感じれる本だった。